成功のカギは"一緒に仕事している感"雑談できる「場」をつくる(テレワークマネジメント田澤氏xサイボウズ野水 対談〜後編〜)

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テレワークの意義は理解しても、どこから手を付けたらよいのか分からないという企業も多い。どのようにしたらテレワークを導入し、運用を成功させることができるのか。後編では、テレワークマネジメント 代表取締役 田澤由利氏が自らの実践とコンサルティング例を、サイボウズ 社長室 フェロー 野水克也氏がサイボウズ社内での経験を紹介し、成功のカギを語り合った。前編はこちら


※本記事は「ITproSPECIAL」からの転載記事となります。


就業規則を定めITツールの運用方法を決める



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株式会社テレワークマネジメント 代表
取締役/株式会社ワイズスタッフ 代表
取締役 田澤 由利氏



野水 テレワークを始める際に、企業はどこから手を付けていったらよいのでしょうか。田澤さんご自身の経験も含めて教えてください。


田澤 実は、現在でも一人に一つのメールアドレスがない会社がたくさんあります。PCで資料を作成するものの保管書類はすべて紙、という会社もあります。そうすると、会社に来ないと仕事ができないので、テレワークはとても無理だという話になります。


 そういう場合は、まず社員全員にメールアドレスを付与することから始めます。そして、紙は見るためのもので、原本はファイルデータだとはっきりさせて、それをクラウドストレージや社内のハードディスクなどで共有します。紙の書類は膨大な量になるので、それらをすべてデータ化するのはまず不可能です。そこで、今日作成したファイルから始めて、原本が紙の書類が必要になった場合には、その時にスキャンしてデータ化します。


野水 いきなり大きな仕組みに挑戦するのではなく、スモールスタートすることが大切になるわけですね。テレワークの取り組みをある程度進めている企業が気をつけることはありますか。


田澤 必ず勤務規定の問題が出てきます。人事部門は就業規則に在宅勤務の規定をつくります。例えば9時から5時まで働いている人の場合、ある会社では所定労働時間を働いたとみなす「事業場外みなし労働時間制」にしました。別の会社では時間管理制はそのままで、タイムカードの代わりに、上司に電話する形にしています。就業規則を定めるのが第1段階です。


 そして、在宅で会社にいるのと同じ緊張感を持って仕事ができるようにするために、グループウエアなどのITツールを使います。これが第2段階です。ツールは今使っているものでよく、スケジュールなど情報共有のルールを決めて、在宅勤務の社員が会社で働いている社員とコラボレーションできるプラットフォームをつくります。就業規則さえつくればよいという声をよく聞きますが、それだけでは不十分です。運用規則をきちんとつくり、グループウエアの使い方なども具体的に定めていく必要があります。


会社で働いている環境に限りなく近づける



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  サイボウズ株式会社社長室 フェロー
  野水 克也



野水 テレワークをうまく定着させるには、離れていても一緒に仕事をしているという感覚を持てるようにすることがポイントになります。


田澤 そうですね。理想のテレワークを実現するには、野水さんがおっしゃったように、離れていても一緒にいるかのように仕事できることが大切です。それこそ、書類はクラウドにあって、どこからでも取れる。自宅で電話を受けても、内線で同僚や上司に転送できる。スケジュールも共有できる----。このように、会社で働いている環境にできるだけ近づけることで、在宅でも会社でも同じように仕事をしているという感覚、"一緒に仕事をしている感"が生まれます。


 ITがなければテレワークは実現できないので、ITは決定的に重要です。ただ、あくまで道具に過ぎないので、上手に使わないと意味がありません。例えばWeb会議を導入しても使っていない企業がたくさんありますが、毎朝ログインするなどルールを決めて、全員に強制する必要があります。テレワークをする社員だけに向けてグループウエアを導入しようという企業もよくあります。しかし、それは意味がありません。皆で仕事をしているので、せめて同じグループでは全員が利用するようにすることが必要です。


"一緒に仕事している感"を生み出す「場」


野水 テレワークにおいて皆さんが気づいていないのが、田澤さんがおっしゃった"一緒に仕事している感"をどう生み出すかということです。実際にオフィスで仕事をしている状況を見ると、業務を集中して行っているのは6割くらいで、あとの4割は世間話をしながら仕事をしたり、ミーティングしたりしているのが普通です。そういう雑談ができる環境をつくることで、"一緒に仕事している感"が生まれます。昔のグループウエアは上意下達ツールで、情報を伝えていくことが目的でしたが、今は「場」としても使われています。普段雑談をしているのに、掲示板やチャット、電子会議などでそれを禁止しても仕方がありません。むしろその場に在宅で仕事をしている人が入ることで、"一緒に仕事している感"が生まれるのです。


田澤 私たちの会社では、チームで仕事をするために、ネット上にオフィスをつくりたいと考えていました。最初に必要だったのがメールでした。次にチームで使えるツールということで、15、6年ほど前に導入したのが、今も使っている「サイボウズ Office」でした。その後、時間管理ツールや報連相ツールもつくって、これで完璧だと思いましたが、何かが足りないのです。


 そんな中で、2年ほど前に足りないものに気づきました。それが"一緒に仕事している感"だったのです。そこで、バーチャルオフィスを導入しました。バーチャルオフィスで自席に座っていると、まるで会社の個室のように仕事ができます。完全在宅勤務者から「それでは少しさびしい」と言われたので、会議室にフリーアドレススペースをつくりました。毎朝、スペースに入る時に「おはよう」と声をかけると、同じスペースにいる人全員に聞こえるのでお互いに挨拶できます。バーチャルオフィスでは人が訪ねてもきますし、こちらから人を呼ぶこともできて、離れていても会社にいるように仕事をすることができます。



veroffice.jpgテレワークマネジメント(東京オフィス)のバーチャルオフィス。会話中のスタッフには赤いマークが付き、
気軽に雑談に加われる仕組みになっている


野水 会社と同じような環境で一体感をもって仕事をするためには、グループウエアをうまく活用することが欠かせません。まずスケジュールを共有し、次にワークフロー機能を使って、紙の申請や承認をサーバー上に移していきます。サイボウズの「Garoon(ガルーン)」は、システム部門に依頼せずに、ユーザー部門自らがワークフローをつくれるので、紙とハンコからデジタルへの転換がスムーズです。テレワークを定着させるのに大きな力になります。


田澤 工夫して"一緒に仕事をしている感"を生み出すことができれば、どんなに遠く離れていても、テレワークで仕事ができます。そのためにITが果たす役割は極めて重要です。



garoon.jpgサイボウズ社では、グループウエア上で気軽に同僚をランチに誘っているのがよく見られる


◯田澤 由利氏 プロフィール
株式会社テレワークマネジメント 代表取締役/株式会社ワイズスタッフ 代表取締役
北海道在住。電機メーカーに勤務していたが、出産と夫の転勤で退職。1998年、夫の転勤先の北海道北見市でワイズスタッフを設立。「ネットオフィス」の考え方を進め、全国約160人のチーム体制で事業を展開。2008年にはテレワークマネジメントを設立。東京にもオフィスを置き、企業の在宅勤務の導入支援や国や自治体のテレワーク普及事業などを実施している。


◯野水 克也 プロフィール
サイボウズ株式会社 社長室 フェロー 大学卒業後、テレビカメラマンとディレクターを8年、家業である零細建設業の代表を経て、2000年に上場前のサイボウズに入社。広告宣伝、営業マネージャー、製品責任者、マーケティング部長を経て現職。現在は、数年後の事業を見据えたITの可能性を探し、また啓蒙のため全国を回りながら先端事例の醸成とエバンジェリストとしての啓蒙活動を行っている。


※本記事は「ITproSPECIAL」からの転載記事となります。

サイボウズ ガルーン プロモーション担当 山口ほだか