現場の課題、グループウェアのログ解析で分かるってホント?

グループウェアの刷新が決まったのをきっかけに、もっといろいろな使い方を知りたいと思ったアベ。Garoon歴が長い東洋大学の情シス、フジワラさんに話を聞きにいくことにした。グループウェアのログ解析を駆使した課題解決法とは?

今回のストーリーは

ついにアベの会社でグループウェアの乗り換えが決まった。選ばれたのは、サイボウズGaroon。これまでのアベのリサーチが功を奏した格好だ。せっかく導入するのだから、もっといろいろな使い方を知りたい――。そう思ったアベは、Garoon歴が長い先輩企業に話を聞きに行くことにした。最初に訪ねたのは東洋大学の情シス、フジワラさん。みんなに使ってもらうために、いろいろな工夫をしているようだ。

登場人物

・新人情シス アベ

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入社2年目の情報システム部門スタッフ。これまでの1年は仕事を覚えるのに必死で周りのことまで気にする余裕がなかったが、この1年は情シスとして一皮むけたいと思っている。メディアでよく見る"攻めの情シス"にあこがれているが、まずは"頼られる情シス"を目指そうとしている。

・東洋大学 情シス フジワラ

sa_fuji00.jpeg東洋大学 情報システム部門の課長補佐。サイボウズのグループウェアとはOffice 4時代からのつきあい。いろいろな機能を使い倒している。

・cybozu.com導入相談Cafe イケダ 

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Garoonが好きすぎて、時々導入相談Cafeに顔を出すプロダクトマネジャー。担当営業と共に、ユーザー企業の相談に乗ることもよくある。

・ナゾのITお助けウーマン ヤマグチ

yamaguchi.jpegときおりふっと現れては"ITツール活用のコツ"を伝授していくナゾの女性。神出鬼没。

グループウェアを使ってもらうための工夫、あれこれ

グループウェアって、会社で使うものだと思い込んでいましたが、学校でも使うんですね。

東洋大学は、1990年代からグループウェアを使っている古株ユーザーなんですよ。当初は事務局の職員だけでサイボウズOfficeを使っていたのですが、当時の理事長が「教授や附属高校、卒業生団体、父母会とも同じ情報を共有できるようにしよう」という方針を打ち出してから使う人が増え、Garoonに乗り換えました。

10年以上も使っているんですね! グループウェアといえば情シス仲間から、「社員がなかなか使ってくれない」という悩みを聞くのですが、フジワラさんはそんな経験、ありませんか?

もちろんありますよ。昔は自分が「便利だ!」と思う機能をごり押しして、冷ややかな目で見られたこともありましたね......。「利用率を上げたい」という思いが先に立ってしまっていたんです。

ボクも便利な機能を発見すると、つい、うれしくなって勧めてしまうんですが......。

やはり、「無理強い」はよくないですね。無理にいろいろな機能を勧めても、スタッフは嫌々使うだけで、結局、使わなくなってしまうんです。

スタッフに使い続けてもらうために、どんなことをしたのですか?

現場で困ったことがあったときに、問題を解決する手段として使うと、「あ、便利なんだ」と実感してもらえますね。

なるほど! それは確かに効果がありそうですね。

スタッフが"使わざるを得ない状況"を作って、「最低限でもいいから使ってもらう」ようにするのも1つのやり方ですね。例えばうちの場合、教授が研究費を申請するための入り口がGaroonにあるんです。そうすると教授はGaroonにアクセスしてくれるようになりますよね。

確かに! 情報が集まるところに人は集まってきますよね。

そうなんですよ。実は入試の試験監督担当も、Garoonで割り当てを連絡しているんです。時々、直前に試験会場が減って試験監督免除のお知らせが入ることがあるんです。だから、日々チェックしていないと、大学に来て「しまった!」ということになる(笑)。そんなふうにしているうちに、自然と使ってくれるようになりましたね。

フジワラさん......策士ですね。

いやいや(笑)。ここにくれば、必要なものがそろっている――という状況をつくればいいんだと思います。

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なるほど。ポータルが役に立ちそうですね。

まさに! 大学には、人事、会計、成績など、さまざまなシステムがあって、「どこからアクセスするんだっけ」と迷う人も多いんです。これらのシステムへのリンクをポータル機能を使ってまとめておけば、スタッフは「何か申請するときにはグループウェアに行けばいい」と思うようになります。

そうやって使っているうちに、グループウェアを使うのが日常になるんですね。

今では、「大学のシステムはGaroonに入らないと使えない」と思い込んでいる人もいるくらいですよ。

"ログデータ分析"で意外な使い道を発見!

情シスの新たな役割として、「いかに業務現場のリアルな課題を吸い上げ、解決できるか」というものがあります。フジワラさんは、ちょっと変わったアプローチをしていると聞いたのですが、どんなことをしているのですか。

Garoonの利用状況のログを、現場と話すきっかけにしているんです。

え? このログは本来、費用対効果を見たり、役員会で報告するために使うものですよね。

いやいや、それだけに使うのにはもったいないですよ。ログを定期的に見ていると異変が分かるんです。例えば、普段はあまり発言しない職員のアクセスが増えていたら、「どんな使い方してるんですか?」とインタビューしに行くんです。すると、「こういうふうに、ファイルをためていると便利なんだよね」とか、ぼそっと教えてくれる。

新しい使い方を発掘できるんですね。

そうなんですよ。よく、"使いすぎの犯人捜しにログを使う"という話を聞きますが、うちはもっぱら「現場と話をするためのネタ探し」に使っていますね。

実はスケジュールの統計情報で面白いことができるんです。ユーザーがGaroonに予定を入れるとき、「会議」「外出」「出張」などの予定メニューを設定できるのですが、このメニューごとに「誰の予定が何時間入っているか」をリスト化できるんです。

うわっ、それって、「この営業は、こんなに外出が多いのに日報を出してない」みたいなことがバレちゃいますね。

使い方は皆さん次第ですが(笑)、営業成績とすりあわせてみると、何か発見があるかもしれないですよね。

そんな使い方もあるんですね! ほかにはどんな使い方がありますか。

これはサイボウズの例ですが、フリーアドレス制を導入するときに従業員の着席率を出したんです。例えば「外出」「出張」「セミナー」等の離席している予定の比率をベースにして、"営業の着席率"を算出し、「この営業グループは外にいることが多いから、フリーアドレスの席を8人で5席ぐらい用意すれば効率的に使える」といった判断材料に使いました

うちの会社もフリーアドレスを検討しているから、試してみよう!

その結果、サイボウズの社長、青野も自席に座っている時間がほとんどないことが判明して席がなくなったんですよ。今、フリーアドレスの席で仕事してます(笑)

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フジワラさんは、とても面白い活用をしてますよね。一体、どこから情報収集しているんですか。

ユーザーコミュニティーの事例を調べたりこともありますが、基本的には、日々の仕事の中で何か困ったことがあったときに、機能の限界までいじり倒すことが新たな発見につながっていますね。

サイボウズ歴が長いフジワラさんならではの方法ですね。今日、お聞きしたグループウェアの活用法、ボクが参加している情シス交流会に参加して共有しませんか?

そんな集まりがあるんですか、面白そうですね。他の人の活用方法も聞いてみたいから、ぜひ、ご一緒させてください。

ITお助けウーマン、ヤマグチからひとこと

グループウェアの利用ログを使って、エンドユーザーと会話のきっかけを作るっていう取り組みはとっても面白いですね。フジワラさんもおっしゃっている通り、ログ探しは犯人探し! みたいなイメージがありますが、私の周りでは最近、「グループウェアに蓄積された行動パターンや入力情報といったデータをAI技術を使ってさらに有効活用できないだろうか?!」なんて議論を耳にしました。ログデータ、あなどれません。

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<今回ご協力いただいた東洋大学 情報システム部 情報システム課の藤原喜仁さん>

本記事は、ITmediaからの転載です。

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