ICT化で変わる大学・学校教育と教職員の働き方 連絡手段の変化(グループウェアによる変革)

こんにちは、Garoonマーケティングチームです。

今回は、GaroonによるICT化で教職員の働き方が変わった東洋大学様のGaroon活用記事をご紹介します!

メール中心の業務からどのようにグループウェア中心に移行したのか、グループウェアを利用するメリットなどを、長年Garoonの管理者を経験された藤原様が解説されています。

脱メール働き方改革のヒントになるお話が出てきますので、ぜひご覧ください!

※こちらの記事は学校経理研究会『学校法人』2022年7月号に掲載されたものです。


出典:学校法人東洋大学 藤原喜仁ICT化で変わる大学・学校教育と教職員の働き方 第16回:連絡手段の変化②(グループウェアによる変革)」学校経理研究会『学校法人』2022年7月号

◈「メール」の特性について

 前回の記事では、東洋大学での「メール」の活用について、時代を追ってご紹介しました。メールというツールの動作やポイントについて、図解してみました(図1)。

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図1 メールの図解イメージ

 メールは、必要な相手に文字(活字)情報を使って連絡することができます。また、メールにファイルを添付することにより、データの送付ができます。同時に複数の方を宛先とすることができます。一度きりのメール連絡もあり、受け取ったメールに返信したり、あらかじめ作成されたメーリングリストなどを活用することもあります。メールが届くと、受信トレイの中に複数の方からのメールが混在した状態で蓄積されます。これらのメールが毎日届き、それぞれに返信していくことで、業務が進んでいきます。

 このメールツールのメリットは、組織の内部でも外部でも、同じツールで連絡が完結することです。大学の教員などは、「1箇所で見られるからメールで送ってほしい」という方が今でも多いです。

◈「ほうれんそう」の変化

 組織で仕事を進めるにあたり、各部署内では、報告・連絡・相談の「ほうれんそう」を日々繰り返しているかと思います。従来のやり方では、口頭での説明、レジュメ・説明資料を作成しての補足説明、業務上の出来事を日報として作成して提出、などが行われてきたかと思います。資料作成の手段は、手書きかワープロを使い、その資料を手に持って相手に届けて、直接説明して「ほうれんそう」を実現していましたね。

 前回の記事にあったように、2000年頃からは、各自がメールを使えるようになってきました。そうすると、作成した資料をデータで送付するだけではなく、「ほうれんそう」自体もメール上で行うことが増えてきました。このメールでのやり取りについて、はじめの慣れないうちは届いた1通に1通返信して、そこでやり取りが終わりということもありました。受け取った資料(添付ファイル)も、メールから取り出して、自分の手元で整理していく必要があります。

 いざ仕事として使うとなれば、受信メールに返信し、また返信し、また返信し、と延々とメールのキャッチボールが続きます。受け取るメールの通数が増大してきますと、必要なメールを目視では探せなくなります。ラベルをつけたり、フォルダに仕分けすることも、メールを整理する大事な作業でしたが、やり取りの数が増えたときには追いつかなくなります。

 また、メールは自分が必要としている相手から届くばかりではなく、外部の営業担当からのメール、メールマガジン、システムからの通知メールなど、数多くの種類のメールが混在して届きます。要件が別々のメールも、1箇所の受信トレイに混在した状態で届きます。メールのデメリットとしては、メールの通数が多くなっていきますと、常にメールの整理をしていないと、必要なメールを探せなくなることです。1つのメールに対応している間に、他のメールにも対応することになります。そのメールが処理中なのか処理済みなのかは、パッと見ても分かりにくい状態です。この状態を続けてしまうと、業務全体がどんどん滞っていきます。

◈「メール」から「グループウェア」へ

  2001年頃の東洋大学の事務局では、メールの利用は「学外連絡」に絞ることとし、「学内連絡」は「グループウェア(サイボウズ Office 4)」を使って連絡するという運用に変更しました。この頃は、1人1台のWindows PCを配布する準備をしていた頃です。これまでのメールソフト「AL-Mail」から「サイボウズ Office 4」内のメール機能を使うことで、フロッピーディスクでの運用を廃止しました。メール以外には、閲覧履歴やコメントを一覧で見られる「回覧板」機能を使い始めて、活用のスタートとしました。

 ところで、皆さんは「グループウェア」を知っていますか?またグループウェアを日常的に使っていますか?「グループウェアとは、企業内のコミュニケーションを円滑にし、業務効率化を促進するためのソフトウェアのこと」1)とあります。でも、これだと抽象的で分かりにくいですね。もう少し具体的にみていきましょう。

◈事務所(オフィス)での執務イメージ

 メールとグループウェア、この2つのツールには、「空間の捉え方」に違いがあると筆者は考えています。イメージを共有するために、図2を使って説明してみます。

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図2 事務所(オフィス)内のイメージ

 事務所(オフィス)の左下に自分がいます。自席には、机・椅子・ファイル・文書があります。左上には「ファイルキャビネット」があり、ここにファイルを格納しています。自分が自席で利用できる機材には、固定電話・PCがあります。また、持ち運べる機材としては、モバイルPCやスマートフォン(個人所有)があります。

 図の右には同僚の机の様子があり、右端には上司の机があります。同僚や上司のところへ出向いて、直接会話をすることができますね。

 図の真ん中には「打合せテーブル」があります。上司や同僚・他部署や外部の方が集まって、ここで打合せを行います。

 図の上側に「掲示板」があります。ここには、皆さんに見てもらいたいポスターや通知・文書などの情報が紙で貼り出してありますね。アンケートを取っていることもあります。配布したいチラシを置いておくこともあります。

 図の右上には「カレンダー」があります。実際のオフィスでは、ホワイトボードに事務所内の共通の予定や所属メンバーの外出先などを記載することもあります。

 上記のように、事務所(オフィス)内にあるもので、業務に使うものを要素として分解してみると、普段からいかに、それぞれの機能を意識せずに仕事しているかをあらためて知ることでしょう。

◈「仮想オフィス」という発想

 グループウェアでは、図2で示した事務所(オフィス)内のイメージを、1つの「空間」の中に閉じ込めています。机・椅子・各自のPC・書棚・ロッカー・ファイル・スケジュール表・掲示板・郵便受け(メールボックス)などなど。職場に行くと利用するものを、それぞれの機能として対応させています。図3は、サイボウズ社のグループウェア「ガルーン」での機能一覧です。はじめから「仮想オフィス」を実現することを想定して作られています。アイコンのデザインも直感的で分かりやすいですね。

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図3 グループウェア機能一覧

◈東洋大学での取組み

  2003年当時に、次期事務システムの構築を検討する「eユニバーシティ推進室」があり、筆者のもとへ、全学グループウェアを構築したいとの相談・打診がありました。これまでは専任職員がメールや回覧板を使う程度でしたが、当時の理事長から、グループウェアの利用を大学教員や卒業生・父母会の運営団体、附属高校にまで広げてほしいとのリクエストがあったのです。しかし、それまで使っていたサイボウズ Offce 4は最大利用者数が300名となっており、実際に400名を登録して使っていると、全体の動作が遅くなることが多々発生していました。

 この時点で大規模向けのグループウェア「ガルーン」が発表されていたこともあり、本学でも「ガルーン」を主軸にしていくこととしました。2年ほどの準備期間を経て、2005年から運用を開始しています。

◈何ができたか、何が変わったか?

 東洋大学では、2009年4月に「5つの改革」と銘打って、キャンパス移転・学部改組・新キャンパス開学など、いくつかの大学改革を進めてきました。その際に、本部である文京区白山キャンパスを中心に、埼玉の2つ、群馬の1つ、併せて4キャンパスで同時に改革を進めていました。その際に、情報伝達・意見交換・資料配付などでこのグループウェアは大活躍しました。これまでは、対面出席・印刷した資料の配付が原則の会議運営でしたが、グループウェアを使った資料提供や、意見交換が可能となったためです。関係者のスケジュール調整も、グループウェア内で実現していました。後に発生した2011年の東日本大震災の時も、全学を横断する連絡ツールとして大いに威力を発揮しています。

 事務局や大学キャンパスを仮想的な空間として見立てているグループウェア内で普段から仕事をしていると、距離や時間の垣根を取り去り、フラットな情報共有や意見交換ができて、タイムラグもない状況を作り出せます。今で言えば、VR(ヴァーチャル・リアリティ)を使った「メタバース」なども話題になっていますが、あんな感じで、職場でも出張先でも自宅でも、このグループウェアにアクセスすることで、大学の敷地内(仮想オフィス)に入って業務に取り掛かるのと同じような状態が作れたのです。

 2017年には、ビデオ会議システム「Cisco Webex」の専用端末も各キャンパスの主要な会議室に設置し、2019年までには学長室会議室や役員会議室にまで、この専用端末を配置しています。グループウェアでの情報共有があってこそ、ビデオ会議も、資料配付場所や意見交換の場所として、その効果を2倍・3倍にも高めてきました。このグループウェアに普段から慣れ親しみ、当たり前に使われてきた状況があったからこそ、2020年春からのコロナ禍の中でも、大学業務を止めないための「影の立役者」たり得たと筆者は考えています。

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図4 東洋大学・ポータル画面の例

◈グループウェアのススメ

 今でも、職場内でグループウェアを利用せず、メールだけでやり取りしている大学があると聞いています。また、Microsoft Outlookのメールやカレンダーを使ってグループウェアの代替をしている企業も多いようです。ここ最近では、Google Workspaceを使ってその代替をしようと試みている大学もあるようです。

 それらのツールに比べますと、グループウェアはある一定の閉じた空間を作ることが大きな役割を持っています。その空間の中にコミュニティを作り、バーチャルな状況で日常業務を行うための環境です。メールと違い、外部からの情報流入をハッキリと絶つことにより、学内情報だけが蓄積されていく場所となります。私自身がグループウェアの管理者であった時には、過去のデータは何も消さないという運用方針でスタートしました。これまでの紙中心での業務運用では、倉庫の場所が必要であったり、古い情報にたどり着けなかったりします。利用開始の数年後に一度データ障害を起こしたことがありますので、実際には2010年頃からの情報が全てグループウェア内に残っていることとなります。全文検索などで過去の情報にたどり着くことは容易に実現できます。

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図5 グループウェア(仮想オフィス)の「中に入る」様子

 この他にも、もっともっとメリットがありますが、紙面では伝えきれません。ぜひ、一日も早く、メール中心の業務運営から、グループウェア中心に変えてみませんか?これまでにも、業務改革を進めたい大学からのご相談に、外部委員等としてグループウェアの導入をアドバイスした例があります。グループウェアやICT活用全体に本格的な改善をお考えの場合も、遠慮なくご相談ください。

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「Cybozu Days 2017」に登壇、事例発表する藤原様


<引用文献>

1)「グループウェアとは?基礎知識や導入メリット、選び方まで徹底解説!」㈱エイトレッド・ワークフロー総研 https://www.atled.jp/wfl/article/19822/ 更新 2022/05/11

<参考文献>

「グループウェアを社内にどう浸透させる?12年間で培った企業カルチャーの作り方を伝授:俺たちのGaroon2017―ユーザー企業にきく活用の成功談と失敗談―」ログミーBiz https://logmi.jp/business/articles/251927


東洋大学様の Garoon活用方法については以下の記事でもご紹介していますので、ぜひ併せてご覧ください。

現場の課題、グループウェアのログ解析で分かるってホント?|ITmedia

https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1611/16/news001.html

「サイジングに大苦戦」「ユーザー管理を自動化」 3社の事例に学ぶGaroon活用の極意|ITmedia

https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1711/29/news003.html

Garoon マーケティングチーム