「中国市場を攻め続ける新たな組織マネジメント」セミナーレポート

日系企業 300 社が参加。

日本の情報システム部の方にはまだあまり知られていないかもしれないですが、サイボウズは7年前から中国にも営業拠点をもっています。今では、400社を超える日系企業様に情報共有や業務を支援するサービスを提供できるまでになりました。

そんなサイボウズ上海では、毎年1回中国現地法人をマネジメントされている方を対象にセミナーを主催しています。2014年7月に中国上海で開催したセミナーでは、中国で市場開拓を続けるハウス食品様、アサヒビール様の2社をゲストに迎え、各社の実践する組織マネジメントについてお話しいただきました。当日は300名を超える日系企業の方にご参加いただいたのですが、アンケートでは97%の方から「満足」という良い評価をいただくことができました!

今回は、そのセミナーの様子をお伝えします。

サイボウズ上海セミナー

サイボウズの考えるチームワーク

サイボウズ株式会社代表取締役社長 青野 慶久

■チームあるところにサイボウズあり

はじめに、サイボウズの考えるチームワークについて、サイボウズ株式会社代表取締役社長の青野からご紹介しました。
「グループウェアはチームワークを向上させるためのツールです。サイボウズでは、グループウェアの開発を通して、世界中のチームワーク向上に貢献することを目指しています。チームとは一体何でしょうか?メンバーがいて、共通のビジョンを持ち、役割分担をしながら、相互に依存する。これがチームの学術的な定義です。ところが最近はチームの在り方が多様化しています。全員が同じ場所や同じ時間帯では働けるとは限らない。日本人だけじゃないかも知れない。多様化するチームを助けるのがITです。」

■クラウド化による変化

さらに、クラウドによって、グループウェアを始めとしたシステムを導入するための負担が減っていることについても解説しました。「今まで以上に多くの人のチームワーク向上に貢献します。クラウドでの情報共有は、働き方の多様化を進め、より強い企業文化の醸成に役立ちます。」

中国市場を攻めるための組織づくり~カレーライスを人民食に~

好侍食品(中国)投資有限公司(ハウス食品) 董事長 野村 孝志 氏

カレーライスを人民食に。食文化の壁を越えて

img02「ハウス食品のことを、中国で成功している企業と思っている方がおられるようですが、それは大きな勘違いです。まだ発展途上です。一歩一歩なんです。」このように始めた野村氏。
中間層の増加により、中国のマーケットは拡大しています。カレーの生産量拡大にはいまや中国市場の開拓が不可欠です。ところが、もともと中国には、カレーライスを食べる文化がありませんでした。そのため、ハウス食品は、「カレーライスを人民食に」というわかりやすいスローガンを掲げ、中国市場の開拓を続けていると言います。

■常に学んで成長し 自ら未来を切り拓く「敢想敢做(ガンシャンガンズォ)」

ハウス食品_ガルーン中国におけるハウス食品の事業は、カレーを食べてもらう機会を増やすことが中心。カレー教室や試食会を開催したり、小売店で目を引く什器を置いてもらったりと、さまざまな場面でカレーに触れてもらう機会を作っているそうです。こうした活動を中国各地で行うため、営業社員を2年で20名から100名に増員しました。「社員数も営業エリアも拡大する中、本部のある上海ですべて管理するのは不可能です。だから、各地域の営業に自ら考えて行動してもらうことが大事。そして、社員全体のレベルアップが、実績のレベルアップにつながります。」

■"OKY"おれらは ここで やり切ってやる

OKY(オーケーワイ)とは、「お前が ここに来て やってみろ」の頭文字で、現地の現状が日本本社になかなか理解されない不満を表した合言葉。駐在員として中国に勤務している日本人なら誰でも知っているほど有名なこの「OKY」について、野村氏は「そう言いたくなる気持ちもわかる」としながら、次のように語りました。「駐在でいることの大きなメリットは、自分で考えて行動できること。せっかく中国にきたのだから、『お前が ここに来て やってみろ』ではなく『おれらは ここで やり切ってやる』と思って欲しい。」こうした前向きな気持ちを持つことが、厳しい環境の中で一歩一歩の発展の歴史を作ってきたのかもしれません。

継続的に高いモチベーションを維持するチームの挑戦事例

好侍食品(中国)投資有限公司(ハウス食品)経営企画部統括部長 堂上 貴幸氏

■「敢想敢做(ガンシャンガンズォ)」を実現する人財教育

ハウス食品では、中国語で「敢想敢做(ガンシャンガンズォ)」というキーワードを掲げ、社員の教育に力を入れています。「敢想敢做(ガンシャンガンズォ)」とは、「自分でやるべきことを判断し、チャレンジする」という意味です。これを実現するために、人【財】強化が必要なのだそうです。

■双方向の情報共有を求めて「サイボウズ ガルーン」を導入

img03営業社員の人数や営業拠点が増える中で、情報共有のプラットフォームが必要になり「ガルーン」を導入した。導入の決め手は、クラウドサービスであることと、低コストであることでした。
「営業活動の成功事例を共有するために、掲示板をよく使っています。店頭の陳列方法の紹介など良い書き込みがあれば、コメント欄を使ってみんなが褒めます。老板(経営者)が褒めてくれるとやっぱりうれしい。そして、その様子を他の営業社員も参考にしています。どういう活動をすると褒められるかがわかるので、みんな同じ活動をするようになりました。」こうしたグループウェアを活用した成功事例の共有が、営業社員一人ひとりの成長につながっています。

■これからも、人財育成に力を入れたい

中国でのカレーライスのリピート率は60~70%と高い。堂上氏は、「日本式のカレーライスという新しい食文化が、市場から受けられているという手応えを感じている。」と言います。そのため、現在は新規顧客への認知向上に力を入れ、新規エリアや新しいユーザー層の開拓のため、今後も人財育成に力を入れています。

変化するビジネス環境にいち早く適合するチームの挑戦事例

朝日啤酒(中国)投資有限公司(アサヒビール)営業企画部長 祈 秀章氏

■中国の「プレミアムビール」市場とは

img04祈氏には、中国でのプレミアムビール市場についての取り組みをうかがいました。中国のビール市場は世界一。その消費量は、約5000万キロリットルに上ります。これは、日本の約10倍、アメリカの約2倍の消費量です。そんな巨大な中国のビール市場の中でも、アサヒビールは「プレミアムビール」市場(高価格帯)に注力しているのだそうです。

アサヒビール_ジョッキ_kintone中国のプレミアムビール市場は、それだけで約250万キロリットルと、日本のビール市場全体の半分を占めるほど大きな市場。しかも拡大を続けています。そのため、プレミアムビール市場には、欧米の著名なビールブランドも注力していて、プレミアムビールを取り扱う飲食店では、複数のドラフトビールを取り扱っていることが多くあります。顧客から、銘柄を指定した注文を取るために、これまで以上にアサヒのロゴ入りのジョッキやポスターなどの販促品の重要度が増しているのだそうです。

■市場開拓における3つの課題

アサヒビールにおける中国のプレミアムビール市場の開拓には、3つの課題がありました。

1. 販促品を有効活用できていない
2. 販促品管理が煩雑になっていた
3. 得意先情報をそれぞれの営業担当しか把握できていなかった

これらの課題を解決するため、「kintone」を活用することになりました。「『kintone』で作成した得意先マスタ、販促品マスタをベースに、販促品配送システムを『kintone』で構築しました。これによって、販促品の送付手続を、アサヒビール、ホシザキ電機様、ヤマト運輸様の3社で『kintone』上で行うようにしました。」 配送依頼から発送までの業務がシステム化されたことによって、販促品の配送業務に関わるメンバーの負担が減っただけではなく、配送の遅延や配送ミスもなくなったそうです。
アサヒビール_kintone

■今後は「kintone」の活用範囲を広げたい

得意先情報の管理や販促品情報の管理ができるようになったアサヒビール中国。今後は回報記録管理や売上データ分析まで行う予定があるそうです。


サイボウズ プロモーション担当 荒川 真実